【ウルトラマン】トリガーとデッカー、序盤を見た感想

トリガーとデッカーを並行して視聴。序盤の感想&考察を書きます。


【トリガー】

「ルルイエの花って何……??」という疑問は誰もがツッコんでいるはず(特にクトゥルフ好きなら当然)なので、スルー。


今回、僕がトリガーを見始めた動機として「作風は好みじゃないけど、神話や哲学的な要素を汲み取れるのではないか」という予想があった。


今回はビンゴ。まさに原印欧神話(インド・ヨーロッパ神話の元になった神話で、日本神話にも影響している)を思わせる要素があった。


原印欧神話においては「マヌ・エモ・トリト・牛・蛇」という登場人物がいる。詳しい説明は省くが、エモは双子、トリトは英雄、牛は重要なアイテムやヒロインで、蛇はそれを奪おうとする敵キャラだ。


ヒーローものにおける『トリト』役が、ヒーローである事は間違いない。特に、トリガーの元ネタであるティガの名前は興味深い。ティガの由来はインドネシア語の「3」を意味する言葉だと言われているが、(たぶん偶然の一致で)印欧祖語のトリト(*trito)は「3」を意味する言葉なのだ。


「え、3って数字に何か意味があるの?コジツケじゃね?」と思う人は当然いるだろう。だが、印欧神話においては結構重要。


たとえば、バリエーションの一つであるゾロアスター教の神話には、英雄スラエータオナがいる。彼は原印欧神話のトリトに当たるが、彼の仲間であるクルシャースパは、スリタ(→これも語源はトリト)という人物の息子。さらに、クルシャースパは復活後、「三人目の救世主」であるサオシュヤントとともに、悪竜アジダハーカを倒す。


また、ゾロアスター教キリスト教を元にした宗教『マニ教』では、太陽神ミトラの三男として『英雄アダマス』(Adamas herosラテン語での呼び名)がいて、海の魔獣という敵を倒す。


このように3という数字だけでも語りがいはあるのだが、話をトリガーに戻そう。


悪しき蛇が、世界の象徴である牛やお姫様を奪い、それを英雄トリトが倒す。この図式からは複数の意味が読み取れる。例えば「難産→出産」「嵐→晴れ」「冬→春」などなど。単純に「戦い→勝利と平和」という読み方もできるし、現代のファンタジーやヒーローものでは「闇→光」という流れになっていることも多いだろう。


これらの流れを「AになるかBになるか分からない、『状態の重ね合わせ』から『片方の状態が確定すること』」と解釈する人がいる。


「子が無事に生まれるのか、母が死なずに済むのか、分からない状態」

「嵐がいつ止むか分からない状態」

「春がいつ来るか分からない状態」


それが『重ね合わせ』だ。


僕はそのような解釈の支持者で、『重ね合わせ』は非常に重要な概念だと捉えている。


また、「トリト」と「蛇」が状態の確定を司るのに対し、「エモ」は『重ね合わせ』そのものを司る存在だ。エモはそれ自体が双子として表現される事も多く、男女だったり、雌雄同体だったりもする。ただし、双子はたいてい一人になる。片方は死に、片方は生きるからだ(ロムルスとレムスや、イザナギイザナミなど)。


…と、前提知識をつめこんだところで、トリガーの第一話における『重ね合わせ』を見ていこう。


・ルルイエのつぼみ→咲くのか咲かないのか分からない、重ね合わせ


・ユザレから主人公への言葉「あなたは光であり…」→光なのか闇なのか、その重ね合わせ


・ゴルバー→ゴルザとメルバ、その重ね合わせ(雌雄同体としてのエモや、雌雄同体の土偶を思わせる造形)


このように、トリガーの第一話では『重ね合わせ』というシンボルが複数見受けられる。もちろん、これを偶然の一致と見てもいいし、製作陣が実際に神話を参照したのかどうかは定かではない。


ただ、脚本術の基本として、第一話は物語全体の予告であり、問いである。ここにトリガーの『新たなる英雄神話』というコンセプトや、『重なった可能性はどこに行き着くのか』という問いを見ることは、そんなに的外れではないだろう。


【デッカー】

トリガーと比べた時に、あきらかに作風が落ち着いている。細かいところがしっかりしているし、第一話の構成は「正統派のウルトラマンに近い」と言っても過言ではない。


おそらく、『神話』というコンセプトはトリガーでやりきった。だから『SF(科学的フィクション)』というコンセプトが可能になったのだろう。


現状、トリガーの世界観をうまく活かしているのも良いところで、僕のような新しいファンを取り込みながら、前作のファンを置いてけぼりにしない姿勢だ。このような姿勢は、物語を作る上で大切なことだ。


さらに、世界観が連続しているからこそ、『断絶』が分かりやすくなるという効果もあった。当たり前のように火星と地球を行き来する『トリガー』の世界観。それを知っていればこそ、「火星と地球の断絶」はより衝撃をもたらす。「通信妨害による無人機の廃止」もそうだ。毎週のように無人機を遠隔操作していたあの時代を知っているからこそ、衝撃はデカくなる。


(それにしても、どこかガンダムを連想させる第一話だと思う)


さて、ほかにも書けそうな事は山ほどあるが、それは次の機会に。デッカーの今後に期待!